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「前提がズレている世界観」三崎亜記作品のオススメランキング「となり町戦争」「バスジャック」「玉磨き」「鼓笛隊の襲来」「ニセモノの妻」

三崎亜記が作り出す「心地よい違和感の世界」

「ちょっとズレた世界観」を前提としながらも、思わず納得する理屈やこだわりが潜んでいる三崎亜記さんの作品。


・「となり町との戦争」が行政の仕事の一環になっている世界。

・どれだけ美しく「バスジャック」ができるかを競っている世界。

・定期的に、まるで台風のように「鼓笛隊」が襲ってくる世界。


「異常が通常」という不思議な物語を是非とも味わってください。

今回はその中でもオススメの作品をご紹介します。

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ちなみに男性です 笑

1位「バスジャック」

バスジャック (集英社文庫)

バスジャック (集英社文庫)

 

 とにかくオススメなのが「バスジャック」。短編集なので一つ一つの話をさくっと読めます。その中でも好きな話が表題にもなっている「バスジャック」です。

今、バスジャックがブームだ。バスジャックが様式化され、数々のマニュアルが法整備され、娯楽として人々に認知されて久しい。そして、私が乗るバスもジャックされるが、

目に余る彼らの稚拙なバスジャックには辟易するばかりだ。さりとて、私は困っている。

荷物検査で、今持っているアタッシェケースの中を見られては困るからだ。果たしてバスジャックの結末は……。


また1話目の「二階扉をつけてください」も非常に切れ味が鋭いです。

「町内でお宅だけですよ、付けていないの」「何がですか」「二階扉ですよ、ちゃんと回覧板読んで下さいよ」近所のおばさんからの突然のクレーム。

この土地に越してきて2年が経つが、『二階扉』なんて見たことも聞いたこともなかった。

隣近所の家を見回してみると、確かにどの家の2階にも扉が付いている。だが、外付けの梯子があるわけでもなく、用途がよく分からない。

ゾクッとした恐怖をたっぷりと味わうことができます。

2位「となり町戦争」 

となり町戦争 (集英社文庫)

となり町戦争 (集英社文庫)

 

こちらは長編。「となり町」で戦争が起きているのにもかかわらず、まるでニュースの向こう側の世界のように、実感がなく実害のない状況。漠然とした不安感が増していく名作です。

広報で突然知らされた、『となり町との戦争のお知らせ』。とりあえず私が心配したのは職場までの通勤手段だったが、町は今までどおり平穏な様相を呈していた。

戦時中だという意識を強めたのは、広報紙に掲載された戦死者数。やはり戦争は始まっていたのか。

現実感を抱けないままでいる北原の元に、町役場から偵察業務の任命書が届く。戦争が公共事業として役所に管理される世界を描く。

 海外の戦争をテレビで見ている時に感じる非現実性を、となり町からも感じることができたら一体どうなるのか?

3位「鼓笛隊の襲来」

鼓笛隊の襲来 (集英社文庫)

鼓笛隊の襲来 (集英社文庫)

 

 こちらも短編集。やはり三崎亜記さんの作品は短編で読むくらいがちょうど良い。

オススメの作品は表題作の「鼓笛隊の襲来」

鼓笛隊がまるで台風のように襲来し、その音に心を奪われたものは鼓笛隊に加わって意識がなくなるまで歩き続けるという恐ろしい設定。

赤道上に発生した戦後最大規模の鼓笛隊が、勢力を拡大しながら列島に上陸する。

直撃を恐れた住民は次々と避難を開始するが、「わたし」は義母とともに自宅で一夜を過ごすことにした

がて響き始めたのは、心の奥底まで揺らす悪夢のような行進曲で…

また、結局どうなるの?と手が止まらなくなる「突起型選択装置(ボタン)」もオススメです。

背中に「ボタン」のある女性と出会い、そしてその「ボタン」を見張っている刑事に監視される主人公。一体そのボタンを押すと何になるのか?単純な好奇心以上に、「あんたたちがやれと言うからやっているんだ」という刑事の言葉が胸に刺さります。

4位「ニセモノの妻」 

ニセモノの妻

ニセモノの妻

 

 夫婦の間を描いた4つの物語。「ニセモノの妻」と「断層」がオススメです。

とてつもなく切ない。誰が悪いわけでもない世界をほんのりと味わうことができます。 

もしかして、私、ニセモノなんじゃない?

ある日、六年間連れ添った妻はこう告白し、ホンモノ捜しの奇妙な日々が始まった―。

けれどいったい、僕は誰を愛してきたのだろう?奇想の町の名手が切り拓く、愛おしき新境地。非日常に巻き込まれた夫婦の、可笑しくてホロリと切ない四つの物語。

見た目も性格も本物と同じの「ニセモノの妻」と主人公が距離を縮めていく様は、どこか浮気現場を見ているような背徳感を覚えます。 

5位「玉磨き」

玉磨き (幻冬舎文庫)

玉磨き (幻冬舎文庫)

 

 全体がゆるく繋がっている連作短編集です。

ルポライターの私は、取材のために全国を訪ね歩いていた。

どこへも辿り着かない通勤用の観覧車、ただひたすらに玉を磨く伝統産業、すでに海底に沈んだ町の商店街組合…。

そこで私が出会ったのは、忘れ去られる運命にあるものを、次に受け継ぐために生きる人々だった。今、この瞬間にも、日常から消えつつある風景を描いた、6つの記憶の物語。

どこか侘しく、どうしもようない手ごたえのなさを感じてしまう作品が集められています。