巨大な本棚から選んでもらうためには?
水谷です。小説家しています。
このブログで散々伝えている内容ですが、WEB小説投稿サイトの盛り上がりによって「無名の作家」でも注目を集めることが可能になりました。
しかし、それは「たくさんの人に作品が届けられる」という意味ではありません。
イメージとしては「読者の世界に本が自動的に届けられる」よりも「読者の前に巨大な本棚が際限なく広がった」というイメージ。
平積みでなく、背表紙だけがズラッと並んだWEBという巨大な本棚。
その前に立つ読者に、いかに自分の本を「選んでもらうのか?」が重要となります。
弱者戦略
基本的に水谷は弱者戦略です。
知名度や実績があるわけでもない中で「いかに読者に足を止めてもらうか?」を意識して作品を書いています。
読者に足を止めてもらうために重要なのが 「タイトルがキャッチー」であること。
僕が最も力を入れていると言っても良い部分です。時にはタイトルありきで作品の中身を作っていくこともあるくらい。
では、「キャッチー」とは何であるのか?
それが「+α」と「?」という2つの要素です。
「+α」と「?」
「+α」と「?」について、 漫画「暗殺教室」を描いた松井先生が「ひらめき教室 「弱者」のための仕事論 」で語っていた話が非常に参考になったので引用してみます。
自分では本格派だと認識していまして……。つまり自称本格派(笑)。一球目だけ変化球で入って、あとはセオリー通りに組み立てているだけなんです。『暗殺教室』もまさにそうでした。
あの漫画は普通の学校ものなんです。ただ「暗殺」と一言加えて入り口を変えるだけで、全然別の世界が開ける。『暗殺教室』は自分の中で、王道というかど真ん中に近いんですよね。
王道のジャンルに「+α」の何かを付け加えることで、一気に人目をひく作品になります。
そして、同書でデザイナーの佐藤オオキさんが話されていることにも重要な示唆が含まれていました。
(良いデザインには)クエスチョンマークとビックリマークが両方必要。最初に「あれ。何だろうな?」がないと、無関心な人を惹きつけられないんですが、それだけでは気持ち悪い状態で終わってしまう。
その後、「あっ、なるほどな」と膝を打てないと、デザインとして成立しないんですよ。
この考えは「作品タイトル」を書く時に参考にできそうです。
やはり「タイトルだけで全て想像できる作品」は手に取らないんですよね。
それよりも「そのタイトルの話だと一体どうなるの?」と、読者の頭に「?」を浮かばせないといけない。
そして物語の中で「!」を持ってくる。「あぁ、そういう物語なのね!」と納得させることができれば、続きを読んでもらえます。
逆に、タイトルの「?」に触れないまま、解消しないままの物語は、早々に離脱される危険性があるでしょう。
水谷が思わず衝動買いしたもの
ちなみ僕が惹かれたタイトルを一部紹介してみます。
「ダンジョン飯」

ダンジョン飯 1巻<ダンジョン飯> (ビームコミックス(ハルタ))
- 作者: 九井諒子
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / エンターブレイン
- 発売日: 2015/01/15
- メディア: Kindle版
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「ダンジョン×飯」という秀逸すぎる組み合わせ。
「外れたみんなの頭のネジ」
周りの皆が狂っている話であることを端的に示すタイトル。
「暗殺教室」

暗殺教室【期間限定無料】 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)
- 作者: 松井優征
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2016/10/20
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やや乱立している感もありますが「○○教室」ってやっぱり一旦はどんな作品なんだろう?と立ち止まってしまいます。
「リアルおにごっこ」
全国の佐藤さんを殺す、というこれ以上ないキャッチーなタイトルとあらすじ。
「君の膵臓を食べたい」
グロ系の話かと思ったら恋愛系でした。タイトルからどうしようもないほどの愛情が伝わってきます。
「王様ゲーム」
携帯小説初期の頃を代表する作品。WEB小説とタイトルの重要性を示してくれた作品です。
「世界から猫が消えたなら」
最初、ジャンルすら分かってないのに手に取ってしまいました。それほどに引きつけるタイトルです。
「桐島部活やめるってよ」
「ってよ」の部分が相当秀逸。この後も名作を発表しているのも凄いですが、 最初はこのタイトルだからこそ人の目に止まったはず。
「食糧人類」

食糧人類?Starving Anonymous?(1) (ヤングマガジンコミックス)
- 作者: 蔵石ユウ,イナベカズ,水谷健吾
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/09/20
- メディア: Kindle版
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ありがとうございます。水谷原案の漫画です。この並びであわよくばと思い載せてみました。